The 9th Annual Meeting of Japanese Association of Medical Technology Education

第9回日本臨床検査学教育学会学術大会

大会長挨拶

山藤 賢 会長
第9回日本臨床検査学教育学会学術大会
大会長
山藤 賢(昭和医療技術専門学校

このたびの、第9回日本臨床検査学教育学会学術大会は、昭和医療技術専門学校が主管となり、学校の所在地でもある地元東京都大田区蒲田で開催されることとなりました。大田区はNHK朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」でも話題になったように、産業の町として全国的にも有名な土地柄であり、今回の会場も、大田区産業プラザを使用させていただきます。久々の首都圏開催となりますが、副会長を務めていただきます和合治久先生(埼玉医科大学保健医療学部健康医療科学科)を始めとした、周辺校のご協力をいただきつつ、たくさんの方々の参加を期待しております。

現在、我々協議会は、戸塚実新理事長のもと、理事・委員会構成、その役割分担などを構築しながら進めている状態であります。学会開催におきましても、準備の方は順調に進んでおりますが、学会内容に関しましてはまだそれぞれのセクションと協議をしながら進めている部分もあり、色々と不手際もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

今学会のテーマですが、『臨床検査技師教育の歴史を紡ぐ』~教育者としての在り方を考える~とさせていただきました。

昨年の学会以降、たくさんの方々から、本学会の在り方、役割について、様々なご意見、ご指摘をうかがうことができました。ありがとうございました。それを参考に今、皆様が求めている事、学びたい事、考えたい事、などを盛り込みつつ、独自の色を出せる学会にと考えております。

来年度は第10回の記念すべき節目の大会となります。その前に、第9回学会の役割として、今回はこれまでの歴史を一度振り返ることにより、これから掲げなければならない「臨床検査技師教育の在り方」、「教育者としての在り方」を考えるような機会にできたらという思いがあります。この学会は、振り返れば、そもそもが夏期教職員研修会から始まり、教員の資質向上を目的とした学ぶ場であった学会であります。前回大会におきましては、学生の参加者数、発表者数が大幅に増え、総演題数、総参加者数も増加し大きな成功をおさめました。これは大変喜ばしいことであります。しかし一方で、我々教員の参加者数並びに、教員の発表数は減っている傾向にありました。もちろん、必ずしも、それが悪いというわけではなく、この学会の在り方として、我々も自省し、考え直さねばならないこともあるのではないかという声を、多数の諸先生方からいただきました。

そこで、今回、学会を3日間の一つの物語(ストーリー)として考えた時に、『「鳥の目」「虫の目」「魚の目」』という3つの視点の物の見方をベースといたしました。これは、経営的な物の見方などの時に使われることがありますが、鳥の目とは、高いところから俯瞰的に物事を大きくとらえるということです。虫の目というのは、それこそ目の前にあることを絞って見るということです。この二つは物事を見るときに、大きく全体像をとらえること、現場での小さいことを見逃さないこと、その両方の見方を同時に行う大事さを表しています。それに加えて、魚の目と言うのは、流れを読む力ということです。魚は通常、目には見えない水の流れを感じて動いています。そのような歴史や社会の流れを感じながら物事をとらえるというのも大事な要素です。

その中で、鳥の目という大きな物事をとらえる講演として、医療特別講演として、高橋泰先生(国際医療福祉大学)による「人口減少社会に向かう日本の医療福祉の現状と将来予測」という講演を初日にお願いいたしました。我々は医療の現場で活躍する医療人を教育しています。しかし、少子高齢化の進む日本という国において、その医療の現場は今後どうなっていくのか、医療従事者の役割はどうなっていくのか、まずは大きな問題提起から入っていきたいと思います。そして、次に大きな枠組みとして、医学教育という視点から臨床検査技師教育を見た時に、その歴史的背景も含めて、今後に生かせる内容は多くあるはずであり、そのあたりを、高木康先生(昭和大学)に講演をお願いしております。この二つの講演は、研修会委員会企画として開催いたします。

その流れから始まって、教員・学生発表を経て、まさに虫の目という視点で、最後には、現場に落とし込んだ話までという最終日といたしました。日臨技・都臨技共催企画として、日本臨床衛生検査技師会常務理事・東京都臨床検査技師会会長である下田勝二先生から卒前卒後教育と連携について講演いただき、そして臨地実習も含めた現場教育の在り方を、東京医科歯科大学医学部附属病院検査部臨床検査技師長である萩原三千男先生に講演いただきます。このセッションはシンポジウムとして、我々協議会の前理事長・現理事長にも参加いただき、ディスカッション形式としていますので、会場も巻き込んで、さらに突っ込んだ卒前・卒後教育の議論が展開されることでしょう。

そして魚の目という視点に関して、今回、テーマとしてかかげている「歴史を紡ぐ」というのはまさにそれに当たります。これまでの臨床検査技師教育を最前線で牽引してきました三村邦裕先生(日本臨床検査学教育協議会前理事長)に、我々協議会・学会の歴史から始まり、これからの在り方についてまで、提言いただけたらとお願いしております。高木康先生の講演も同様に歴史の流れを認識していただく良い機会になることと思います。  さらに、今回は、特別教育講演として、お二方の先生に依頼いたしました。普段我々は臨床検査技師教育という部分では、かなり専門性に深くなる傾向にあります。しかし、我々は皆「教育者」であります。臨床検査技師という特化した部分にだけ目を向けていればいいのではなく、その学生を、将来、社会で活躍し必要とされる社会人として送り出す重要な役割を担っています。そのためには、学会テーマにあるように我々自身が、教育者としての在り方を考え、学び、成長しつづける必要があります。そのような学びの場としての教育講演を今回は企画いたしました。学会2日目に、学生支援も含めました講演として、西成活裕先生に講演をお願いしております。西成先生は東京大学先端科学技術研究センターの教授であり、科学者としての最先端で活躍されている先生ではありますが、同時に、渋滞学の研究者として世間では著名であり、多数のテレビ番組でご覧になられたことのある方も多いと思います。またその教育論はとても興味深く、多数の著作は大きな評判となっております。今回はその独特な理論をもとに「急がば回れの教育論」という演題をお願いしております。

学会3日目には、現在、東京の開成中学校・高等学校の校長を務められている柳沢幸雄先生に講演をお願いいたしました。柳沢先生は、東京大学大学院、ハーバード大学公衆衛生学教室教授として教鞭をとられてきた先生です。ハーバードではベストティーチャーに何度も選出されています。環境問題の専門家でもあり、地球温暖化やシックハウス症候群に関しての日本の第一人者でもあります。多数の著作も持つ先生からは、今回は、学生自身の力を伸ばすということに関して、「自信を持つ次の世代を育てるには」という演題のお話しをしていただくことにいたしました。

両先生とも、私が勉強会・研修会等で知り合った先生方で懇意にさせていただいており、その講演の内容の面白さに私が今回懇願し、ご多忙の中、講演をお引き受けいただけました。私達教員にとってとても有意義な時間になるに違いないと思っております。

2日目の夕方からは、教員は科目別分科会が開催されます。今年から、この分科会は、学会主体ではなく、協議会が主体となって継続してくこととなりました。各分科会が会長を中心にますます盛り上がっていくことを期待しております。

さらに、その分科会の開催時間の裏では、学生支援講演として、あのサッカー日本女子代表を世界一に導いた佐々木則夫監督が講演を引き受けてくださいました。大変多忙な合間をぬってですが、少しでも未来を担う学生たちが目を輝かせるような機会になってくれればとご協力くださいました。「夢と出会いを力に!」という講演は、学生にとって、未来への道標の一つとして、また夏の良き思い出の一つとなることでしょう。

そして最終日の締めの講演は、登山家であり野外学校を主催しております戸高雅史先生にお願いしました。戸高先生は、ヒマラヤの山々を始めとした単独無酸素登頂の成功などで、世界的にも有名な登山家であります。現在は、海外のみならず日本の中でも、厳しくも美しいあるがままの自然や里山での体験をもとに、「からだの感覚」に立ち「いのち」の世界にふれることをコンセプトにした活動をしています。私も福島・富士山での活動などを共にさせていただいている「まささん」(戸高先生)ですが、写真や楽器なども用いたその講演は、いつも聞く人々の心をあたたかくしてくれます。私達が「今まさに生きている」という壮大な物語を感じさせてもらえる講演は、学会のフィナーレとして、勉強になると同時に、皆様にも楽しんでいただける時間になると思っています。

私達は、今までの臨床検査技師教育におきまして、今後も変えることなく受け継いでいかねばならない根幹となるもの、また勇気を持って変化し続けていかねばならないこと、その両方を大事にしつつ未来に向かって前進していかねばなりません。

なぜなら、我々の行っている「教育」とは、若者の未来を創り、日本の未来、地球の未来を創っていくための大事な役割を担っているからであります。

臨床検査技師として有能な人物を創出することだけが我々の最終的な目的ではありません。そのことが、社会と繋がり、医療界から、そして社会から必要とされなければ、そもそも臨床検査技師の存在価値さえ問われてしまうからであります。

そのためには、我々教育者が臨床検査の枠に限らず、大きな視点で物事を学び、成長を続け、それを臨床検査技師教育を通じて学生に返していくことが必要となっていきます。大きなマクロの目で物事をとらえ、小さな目の前で起きていることにも全力を尽くす努力と覚悟が必要です。

繰り返しになりますが、今学会におきましては、大きな視点で物事を学べる場、また我々自身が物事を深く考え、共有し、組織として前に進むことを考えていけるような場を、少しでも提供できたらと考えております。

そのためには、諸先生方のお力と智慧がなによりも必要です。

準備におきましても、至らぬ点が多々あることと思いますが、皆様と共にいい学会を創り上げていきたいと思っております。

学会長としては、誠に力不足で未熟な私ではありますが、精一杯の努力をさせていただく所存でありますので、ご協力のほどどうぞ宜しくお願い申し上げます。

そして、たくさんの先生方の参加を心よりお待ちしております。

注)文中に出てくる役職等は、あくまでも講演依頼時(本文作成時)のものであり、学会開催時には変更している可能性があることをご了承ください。

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